個性を尊重できれば、腸内環境も、世界も平和になるはなし【腸活論文紹介】

先日、近畿大学などの研究チームが、ある研究結果を発表しました。要約するとこんなかんじ。

⓵前立腺がん患者の便には、リケネラ、アリスティペス、ラクノスピラといった腸内細菌が多く含まれている。
➁これらの細菌は、「」を作る。
➂作られた「」は、成長因子「IGF-1」を増やしてがんの増殖を促進する

これを聞いて、「え?」って思ったなら、あなたはかなり腸活に詳しい、腸活オタクです。

今回は、「なんのはなしかわからん」とおっしゃる方向けにご説明してみたいと思います。

※この記事は長谷川ろみのStand.fm「聴くだけ腸活ラジオ」内での話題を元に原稿にしています。
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ポイントは、「短鎖脂肪酸」

」は、腸内細菌が腸の中で作ってくれているモノのひとつです。その中でも、比較的ポジティブな文脈で語られることが多い物質。

なぜならこの「」が、瘦せやすい体を作ってくれると言われているから。


=腸内細菌が作る、酪酸、プロピオン酸、酢酸などの有機酸
=腸壁を丈夫にして腸もれを防ぎ、炎症を防ぐ
=炎症が減ることで、痩せやすくなったり、老化しにくくなることが期待されている

しかし、今回発表された研究を含め、いくつかの研究では、ヒトの体と短鎖脂肪酸の関係がもう少し複雑そうなことがわかってきています。

よい細胞の増殖を促進させ、代謝をあげてくれる「」は、ガン細胞のようなわるい細胞の増殖も同時に促進させているかもしれない、とか。

よく考えたら当たり前かもしれないけど、よい細胞だけ助けてくれていたほうがうれしいなぁ。

ヒトにとって「よいこと」しかしない菌はいない

腸内細菌の研究は、まだはじまったばかりです。

わたしたちが知らないことをたくさんしている可能性があります。それなのに、これはいい菌、これは悪い菌ってなかなか決められません。

そもそも腸内細菌が行う2大活動の「」と「腐敗」は、科学的には同じことを指します。

=微生物の活動のうち、人間にとって有益なもの
腐敗=微生物の活動のうち、人間にとって有害なもの

ヒトが勝手に「有益だ」と思ったことを「」と命名し、「有害だ」と思ったことを「腐敗」と命名しただけ。

腸内細菌は、「ヒトの健康や美容のためにがんばるぞ!」なんていう意識は全くなく、ただ呼吸をするように「」と「腐敗」をしているだけ。

わたしたちヒトだって、「なんのために呼吸してるの?」って言われたら、なんて答えたらいいか迷います。微生物にとっての「発酵」と「腐敗」は、ヒトにとっての「呼吸」に該当します。

今はまだ研究が進んでいないため、よいことしかしないように見えている菌でも、わるいことをしている可能性は十分にあるんですよね。

腸活で大事なのは「腸内環境の多様性」

腸活で大事なことは、「よい腸内細菌を増やすこと」でも、「よい生成物を作ってもらうこと」でもありません。

そもそも「よい腸内細菌」「よい生成物」の定義がまだわかっていません。

大事なのは、よいわるいではなく「腸内環境の多様性」

今の段階では、なるべく多くの数と種類の腸内細菌をおなかの中に飼って、リスク分散することが健康に近づくいちばんシンプルな方法です。

いろんな菌を育てておけば、誰かが悪さをしてもフォローしてくれる子が出てくるかもしれません。一方で、同じ特徴を持っている菌しかいなければ、確実に腸内は大暴走。だれも止めてくれません。

ヒトの社会と同じです。

個性を尊重できる世界が、結局のところいちばん平和なんです。

そのためにできることは、自分の腸と向き合うこと。メディアの情報を信じすぎずに、いろんなことを試して、自分の便を観察して、効果測定すること。

そんなことを言いながらも、このところ短鎖脂肪酸を作りたいと思いすぎていました。反省します。

ばいばいきん。

参考:研究結果&論文等

※1 Metabolic Biosynthesis Pathways Identified from Fecal Microbiome Associated with Prostate Cancer.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30007819/

※2 Gut microbiota-derived short-chain fatty acids promote prostate cancer growth via IGF-1 signaling.
https://cancerres.aacrjournals.org/content/early/2021/05/26/0008-5472.CAN-20-4090

※この内容は、診断・治療または医療アドバイスを提供しているわけではありません。あくまで情報提供のみを目的としています。
※診断や治療に関する医療については、医師または医療専門家に相談してください。この動画は医療専門家からのアドバイスに代わるものでもありません。

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長谷川ろみ

本サイトの編集長|元おデブの腸活研究家|腸内細菌に救われたことをきっかけに、日本の発酵文化や腸の大切さを伝えるためのコト・モノ・しくみづくりに挑戦中|イライラおデブ→海外逃亡→腸覚醒→元楽天→腸活ドリル準備中|健康経営アドバイザー|発酵ライフ推進協会本校オンライン校長|著:発酵菌早わかりマニュアル|
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