
今回は、こんな疑問にお答えします。
・メイラード反応は糖だけに反応するが、カラメル反応は糖とアミノ酸が反応して起こる
・また、カラメル反応は加熱しないと起らないが、メイラード反応は加熱しなくても熟成で起こる
・メイラード反応とアミノカルボニル反応は同じ意味で低温でも起こるが、焦げは160℃以上にならないと起らない
みなさんは、味噌や醤油などの発酵食品を手づくりしたことはありますか?
発酵食品を自分で作ると、どんどん色が変わっていく様子が確認できます。最初は白っぽい大豆ですが、発酵が進めば進むほど、少しずつ濃い茶色へ。
実はこの色の変化は、「メイラード反応」と言われる科学反応によるものです。別名、アミノカルボニル反応とも言います。
メイラード反応によって、独特の香ばしい風味が生まれ、味噌はおいしくなります。
しかし、メイラード反応を放置しておくと、一般的に体によくないと言われる「焦げ」の状態になります。焦げてしまった食べ物は、「体に悪い」「がんになる」と気にして食べない人も多いでしょう。
では、果たして「メイラード反応」を起こしたら、食べても大丈夫なのでしょうか?
今回は、メイラード反応とはなにか、そのしくみを整理してみましょう。そして、茶色い色の正体を明確にして、「焦げ」との違いを大解説!果たして、メイラード反応をした発酵食品や焼き物は、わたしたちの体に悪影響を及ぼすのでしょうか?
メイラード反応は体に悪いのか、それとも逆に健康・美容効果があるのか、まとめてみました。

目次
メイラード反応とは?わかりやすく解説!
メイラード反応とは、加熱や熟成によって糖とアミノ酸が化学反応を起こし、褐色物質の「メラノイジン」ができることを指します。
味噌や醤油などの発酵食品はもちろん、肉や魚を焼いたときの焼き目や、ごはんのおこげ、パンやケーキのこんがりとした焼き目もすべてメイラード反応です。また、たまねぎをゆっくり炒めるとあめ色になりますが、これもメイラード反応です。
=加熱や発酵によって糖とアミノ酸が化学反応を起こし、褐色物質の「メラノイジン」ができること
「メイラード反応」と名づけられた理由は、フランスの科学者メイラード(Louis Camille Maillard)が発見したからです。研究者の名前から反応名がつけられました。
条件➀ 加熱温度
メイラード反応は、加熱すると起こります。代表的なのは、フライパンで焼いた肉です。肉を焼くと、こんがりとしたキツネ色の焼き目が付き、食欲をそそる香りがします。
これは、肉に含まれるたんぱく質と糖が加熱によって化学反応を起こしているから。メイラード反応が起こる温度は100℃以上です。150℃を超えるとかなり褐色の色合いが濃くなります。
条件➁ 熟成
メイラード反応が起こるのは加熱だけではありません。ほぼ常温に近い状態であってもメイラード反応は起こります。代表的なのは、発酵食品の味噌です。
味噌は大豆+塩+麹からできています。大豆のたんぱく質と糖質に加えて、麹の糖質もプラスされ、時間をかけて熟成することによって、少しずつ色が変わっていきます。
最初は大豆色だった味噌が、やがて茶色になり、そしてこげ茶になります。温かい場所においておいたり、たんぱく質の量が多いと色が濃い味噌ができます。
カラメル反応 (カラメル化反応) | メイラード反応 (アミノカルボニル反応) | |
---|---|---|
反応するもの | 糖+アミノ酸 | 糖 |
発生条件 | 常温からOK | 100℃以上 |
メイラード反応とカラメル反応との違い
メイラード反応と似ているものに、「カラメル反応(カラメル化反応)」があります。
カラメル反応とは、糖が加熱されることによって褐色物質の「カラメル」ができることです。
代表的なのは、砂糖を火にかけるとできるカラメルです。砂糖を160℃程度の高温で加熱すると、香ばしい香りとともに、コクのある苦みが出てきて、甘いデザートにアクセントを加えます。プリンに入っているカラメルは、このカラメル反応で作られています。
メイラード反応とカラメル反応は一見似ていますが、明確な違いがあります。
違い➀ アミノ酸のあり・なしが違う
メイラード反応は、糖とアミノ酸の化学反応によるものです。よって、糖だけ、たんぱく質だけの時は起こりません。しかしカラメル反応は、糖だけで起こります。
カラメル反応=糖のみ
違い➁ 発生する条件が違う
メイラード反応もカラメル反応も、加熱によって起こります。しかし、メイラード反応は常温時にも起こりやすいという特徴があります。
例えば、水分です。水分が10~15%程度の若干乾燥している食品のほうがメイラード反応は起こります。ドライフルーツなどは熱を加えなくてもどんどん色が変わっていき、褐色物質の「メラノイジン」ができます。
味噌などの発酵食品は、加熱しない分、時間が必要です。半年ぐらいで少しずつ色が変わっていき、1年、2年と時が経てばたつほど色が濃くなっていきます。
違い➂ 香りが違う
メイラード反応とカラメル反応は、反応している成分が違うので、香りもまったく違います。カラメル反応は糖だけでおこるので、メイラード反応と同時に起こることも少なくありません。その食品それぞれのバランスで香りは全く違います。
メイラード反応はたんぱく質も含まれるので、カラメル反応だけの香りよりも複雑です。
カラメル反応=甘い香り、すっぱい香り、軽くさわやかな香り
食品は糖とたんぱく質が複雑に絡まってできているので、メイラード反応とカラメル反応が同時に起こることも多いです。また、メイラード反応を起こすたんぱく質のアミノ酸の種類によっても香りが変わってくるのだとか。
バリン | パンの香り |
---|---|
ロイシン | チョコレートの香り |
イソロイシン | カビ臭 |
フェニルアラニン | スミレの花の香り |
メチオニ | ジャガイモの香り |
スレオニン | チョコレートの香り |
ヒスチジン | パンの香り |
アスパラギン酸 | 砂糖菓子の香り |
グルタミン | チョコレートの香り |
アルギニン | ポップコーンの香り |
リシン | パンの香り |
プロリン | タンパク質の焦げた臭い |

メイラード反応と焦げの違い
メイラード反応と似ているものに、「焦げ」があります。
焦げとは、炭化することです。
違い➀ 色が違う
メイラード反応は還元糖とアミノ化合物が加熱され、「褐色」になる反応です。
しかし、焦げは違います。
「褐色」の段階で火を止めずにそのまま加熱し続けると、最終的に「真っ黒」になります。この真っ黒い物体が「炭」です。焦げの最終地点は「炭」なのです。
違い➁ 温度が違う
メイラード反応と焦げができるタイミングは、大きく違います。
例えば木材の場合、メイラード反応が起こるのは150℃前後です。しかし、そのまま火にかけ続けていると、すぐに炭化が始まります。160℃ぐらいから炭化が始まり、約300℃で炭ができます。
この温度とタイミングがメイラード反応と焦げの違いです。
メイラード反応とカラメル反応は体にいいのか?悪いのか?
メイラード反応は体にいいと言われる場合と、体に悪いと言われる場合があります。
その理由は、メイラード反応が進んでいくと生まれる、糖化最終生成物(advanced glycation end products; AGEs)に抗酸化作用がある良いAGEsと発がん性や老化をすすめる悪いAGEsがあるからです。
良い理由 メラノイジン
メイラード反応が進んでいくと生まれる、糖化最終生成物(advanced glycation end products; AGEs)の中でも良いAGEsに分類されるのがメラノイジンです。
=優れた抗酸化作用を持つ褐色物質
=脂質の酸化を防ぎ、コレステロール値を抑える
=食物繊維と同じ働きをし、腸内環境を整える
味噌が腸活に良いと言われる理由のひとつが、このメラノイジンです。便通を良くする力もあり、腸内環境を整えると言われています。
悪い理由 AGEs(糖化最終生成物)
一方でAGEs(糖化最終生成物)は、体を糖化させ、老化や病気の原因を作り出すことが恐れられています。
髪のツヤやハリがなくなったり、肌の透明感が失われ、シミやくすみが増えたり、血管がもろくなって炎症が起こりやすくなったりと、老化が進むきっかけになります。
まとめ
メイラード反応とは、加熱や発酵によって糖とアミノ酸が化学反応を起こし、褐色物質の「メラノイジン」ができることを言います。
メイラード反応は糖+たんぱく質の化学反応によって起こりますが、カラメル反応は糖のみで起こります。
メイラード反応によってできる褐色物質「メラノイジン」は、抗酸化作用が高く、シミしわを防いだり、体内炎症を防ぐ一方で、同じくメイラード反応いよってできるAGEs(糖化最終生成物)には注意が必要です。
参考にしてみてね。