
今回は、こんな疑問にお答えします。
・糸をひかない納豆は、腐っていることもあるが、必ずしも100%腐っているわけではない
・納豆が糸をひかない理由は、納豆菌が弱まり、「γ-ポリグルタミン酸=うま味のもと」ができなくなるから。
白いごはんのお供として人気の発酵食品、「納豆」。
スーパーやコンビニでも手軽に買えて、他のタンパク源と比較すると値段も安いので、健康や美容が気になる人に愛され続けています。
しかし、どんどん発酵が進み、形を変えていく発酵食品であるがゆえに、どこまでが食べられて、どこからが腐っているのか、よくわからないという方も多いようです。
そこで今回は、納豆が腐っているサインを徹底解剖!
糸ひかない納豆や、白い粒がついていて食べるとシャリシャリする納豆、くさ~い異臭を放つ納豆が、なぜそうなるのか、そして、そうなった場合に食べられるのか食べられないのかを、ひとつずつ解説します。

目次
結論:糸をひかない納豆は腐っているわけではない
糸をひかない納豆は、腐っていることももちろんあり得ますが、必ずしも100%腐っているわけではありません。
しかし、納豆が製造されてから時間が経ち、保存している途中で発酵が進み過ぎ、味が落ちているのはたしかです。
納豆が糸を引かない理由は、以下のとおりです。
理由➁ 雑菌が繁殖している
理由③ もともと糸をひかない納豆である
一つずつ見ていきましょう。
理由➀ 納豆菌が弱くなっている
納豆が糸をひかない理由の1つ目は、納豆菌が弱くなっていることにあります。
製造から時間が経ち、保存状態もあまりよくないと、納豆菌は元気がなくなり、発酵活動も弱まります。
納豆の糸の正体は、納豆菌の発酵によってつくられた「γ-ポリグルタミン酸」なので、納豆菌の発酵の働きが弱まると、「γ-ポリグルタミン酸」が少なくなり、ねばねばした糸をひかなくなります。
納豆菌にもいろいろな種類があるので、もともと糸をひきやすい菌・ひきにくい菌がありますが、どちらにしろ時間がたつと発酵力が弱まり、少しずつねばねばした糸が減っていきます。

理由➁ 雑菌が繁殖している
納豆が糸をひかない理由の2つ目は、雑菌が繁殖していることにあります。
1つ目の理由の「納豆菌が弱くなっている」にも通ずるのですが、雑菌の勢力が強ければ、納豆菌は元気がなくなりますし、納豆菌が元気であれば雑菌は繁殖しにくくなります。(発酵菌が常に縄張り争いをしてるようなイメージです)
雑菌が入ると、納豆が糸をひかなくなるだけでなく、カビが生えるなどして腐敗が始まるもとになりますので注意が必要です。

理由③ もともと糸をひかない納豆である
納豆が糸をひかない理由の3つ目は、もともと糸をひかない納豆であることもありえます。
納豆は大きく分けると、以下の2種類があります。
塩辛納豆:大豆と小麦と麹菌を一緒に塩水に漬け込んで、熟成させて作る納豆。別名「寺納豆」ともいう。
塩辛納豆は、中国に留学していたお坊さんが仏教とともに伝えた豆鼓(とうち)に由来しています。
豆を使った発酵調味料で、現代も地方のお寺などでは販売され、名物になっています。
浜納豆:静岡県浜松地方の塩辛納豆。徳川家康が好んでいたことで有名。
大徳寺納豆:京都の大徳寺で売られている名物の塩辛納豆。京都には大徳寺納豆を使った京菓子も存在する。

納豆が腐っている状態とは?
「そもそも納豆は腐っているから、腐らない」という論調には、若干違和感があります。
納豆ももちろん腐るのですが、たしかに発酵食品は「腐る」「腐らない」の定義が難しいのは事実です。

賞味期限と消費期限の違い
納豆にも賞味期限はあります。
賞味期限とは、おいしく食べられる目安の期限のことです。
消費期限:食べられる目安の期限。過ぎたら食べないほうが良い

発酵と腐敗の違い
納豆のパックは、必ず賞味期限は書かれていますが、消費期限が書かれているものはとても少ないように感じます。
この理由は、納豆が発酵食品だからです。
発酵も腐敗も科学的メカニズムは同じです。全く同じですが、人間からみて有用か、有害かで分けられます。
腐敗:微生物が行う作用のうち、人間にとって有害なこと
納豆の腐敗:納豆菌以外の有害菌が腐敗し、栄養がなくなること

納豆が発酵しすぎると味が落ちる理由
腐敗はしていなくても(雑菌が入っていなくても)、納豆は発酵しすぎると味が落ちます。
味が落ちる理由は以下のとおりです。
理由➁ 噛むとシャリシャリする
理由➂ 苦味がでる
一つずつ見ていきましょう。
理由➀ 糸をひかなくなる/ねばりが弱くなる
納豆が発酵しすぎると味が落ちる理由の1つ目は、糸をひかなくなるからです。
納豆の糸の正体は、前述した「γ-ポリグルタミン酸」です。
よく納豆はたくさん混ぜたほうがおいしくなると言われますが、その理由は「γ-ポリグルタミン酸」が細かく切れて、うま味成分の「グルタミン酸」がたくさんできるからです。
=昆布などに多く含まれるアミノ酸の一種。うま味のもと(おいしさのもと)だと言われている。

理由➁ 噛むとシャリシャリする
納豆が発酵しすぎると味が落ちる理由の2つ目は、噛むとシャリシャリするからです。
過発酵した納豆は、まれに豆の表面に白い粒が見えることがあります。
この白い粒は「チロシン」と呼ばれるアミノ酸の結晶で、有害なものではありません。
=非必須アミノ酸の一種
=神経や脳の神経伝達をサポートする

チロシン自体は有益な成分ですが、噛むとシャリシャリとして違和感があります。そのため、おいしくなくなったと感じる方ももちろん多いと思います。
腐っているわけではないのですが、この時点で、食べられない方もいらっしゃるかもしれません。
理由➂ 苦味がでる
納豆が発酵しすぎると味が落ちる理由の3つ目は、苦味がでるからです。
納豆の苦みのもとはアミノ酸です。
納豆菌は発酵の過程でたくさんのアミノ酸を作りますが、アミノ酸はそれぞれうま味、酸味、甘味、苦みなどの味を持っています。
九州大学の研究(※1)によると、アミノ酸の種類によって、人が感じる味は大きく異なります。
うま味 | 酸味 | 甘味 | 苦み |
---|---|---|---|
グルタミン酸 | アスパラギン酸 | グリシン、アラニン、トレオニン、セリン、グルタミンなど | トリプトファン、フェニルアラニン、イソロイシン、アルギニン、ロイシン、バリン、システイン、メチオニン、リジン、ヒスチジン、チロシンなど |
甘味を感じるアミノ酸が多ければ、甘味の多い納豆に、苦みを感じるアミノ酸が多ければ、苦みの多い納豆になります。
このアミノ酸の組み合わせが納豆の味を決める要素の1つになっています。

2009年の福岡女子短大の研究内容(※2)によると、「グルタミン酸」と「直接還元糖」が多いほど人間は美味しく感じることがわかっています。
「直接還元糖」は賞味期限切れぎりぎりがいちばん多いので、買ったばっかりの納豆より、発酵が進んだ納豆のほうがおいしく感じやすいと言われています。
納豆が腐っていて食べられないサイン
納豆が発酵の過程を通り越し、雑菌が入って腐敗している場合のサインは、以下のとおりです。
腐敗サイン➁ アンモニア臭・腐ったチーズの臭いなどの胃臭がひどい
腐敗サイン➂ カビが生えている
一つずつ見ていきましょう。
腐敗サイン➀ どろっと溶けて、水分が多くなる
納豆が腐っていると、どろっと溶けて、水分が多くなりがちです。
腐敗が始まったばかりの時は、ちょっと水っぽく感じるだけかもしれませんが、腐敗が進むとどろどろに溶けてしまうこともあります。
こうなってしまったらもう食べられません。
腐敗サイン➁ アンモニア臭・腐ったチーズの臭いなどの胃臭がひどい
納豆が腐っていると、ひどい異臭がします。良くあるのは、アンモニア臭や腐ったチーズの臭いです。
➀アンモニア
➁低級分岐脂肪酸(イソ吉草酸、イソ酪酸、2メチル酪酸など)
これらは納豆菌も作るので、腐っていなくてもアンモニア臭がすることもありますが、雑菌が入っているとさらにひどい臭いになることが多く、臭いがひどい時は食べないほうが賢明です。
=発酵過程で納豆菌などの発酵菌が作り出すアンモニアのにおい
=ロイシン、イソロイシン、バリンというアミノ酸が発酵の過程で科学変化をしたときの低級分岐脂肪酸のにおい

腐敗サイン➂ カビが生えている
納豆が腐っていると、カビがはえます。
カビが生えてしまったら、もう食べられません。
白い粒のチロシンや納豆の周りの白くて薄い膜はカビでありませんが、苦手な人は苦手なので無理して食べる必要はありません。

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納豆を腐らせないための保存法
納豆は保存方法に気をつければ、そんなに腐りやすい食品ではありません。
長持ちさせたいなら、以下の保存法がおすすめです。
保存法➁ しばらく食べないなら冷凍もOK
一つずつ見ていきましょう。
保存法➀ 10℃以下の場所で保存する
納豆はなるべくはやく食べるのが鉄則です。
すぐ食べられないのであれば、開封はせず、必ず10℃以下の場所で保存しましょう。

保存法➁ しばらく食べないなら冷凍もOK
納豆をたくさん買ってしまって、1か月以上食べない可能性があるのであれば、冷凍保存することをおすすめします。
納豆は開封せずに、パックのままジップロックやフリーザーパックに入れて、冷凍保存しましょう。
食べるときは、そのまま自然解凍すれば食べられます。

まとめ~納豆が糸ひかない!シャリシャリする!?~
糸をひかない納豆は、腐っていることももちろんあり得ますが、必ずしも100%腐っているわけではありません。
しかし、納豆が製造されてから時間が経ち、保存している途中で発酵が進み過ぎ、味が落ちているのはたしかです。
納豆が糸を引かない理由は、以下のとおりです。
理由➁ 雑菌が繁殖している
理由③ もともと糸をひかない納豆である
腐敗はしていなくても(雑菌が入っていなくても)、納豆は発酵しすぎると味が落ちます。
味が落ちる理由は以下のとおりです。
→うま味のもと「γ-ポリグルタミン酸」が減る
→白い粒として見える、アミノ酸「チロシン」が増える
→苦みのもとである、イソロイシン・バリン・リジンなどが増える
納豆が発酵の過程を通り越し、雑菌が入って腐敗している場合のサインは、以下のとおりです。
腐敗サイン➁ アンモニア臭・腐ったチーズの臭いなどの胃臭がひどい
腐敗サイン➂ カビが生えている
この状態が見られたら、もう食べられません。
納豆などの発酵食品をもっと食生活に採り入れたい方は、発酵ライフアドバイザー養成講座もおすすめです。
参考にしてみてね。
参考文献~納豆が糸ひかない!シャリシャリする!?~
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22588481/
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902236318702948
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